1【わいせつ教員対策法について】
2022年4月1日に表記法律が施行されました。これまでも教職員等による児童生徒に対するわいせつ行為が問題となり、その対策が喫緊の課題となっていました。
そうした中、抜本的解決のためにわいせつ教員対策法が新法として成立し、この度の施行に至ったところです。
では、この法律によって今後、具体的に何がどう変わるのか、法律の概要をご説明いたします。
2【わいせつ教員対策法の3つの要点について】
わいせつ教員対策法の要点を3つに整理すると次のとおりとなります。
①対象行為の明確化
まず、わいせつ教員対策法では対策の対象となる「児童生徒性暴力等」を定義づけ、何が許されない行為なのかを明確化しました。具体的には下記の行為などが対象となっています。
記
ア;児童生徒等に性交等をすることもしくはさせること
→刑法177条の「強制性交等」の罪において想定されている行為を対象としています。そのため、児童生徒等が13歳未満の場合は同意があっても刑事罰の対象です。13歳以上の場合は暴行脅迫を手段としていればやはり刑事罰の対象です。
イ;児童生徒等にわいせつな行為をすることもしくはさせること
→刑法176条の「強制わいせつ」の罪において想定されている行為を対象としています。上記同様に刑事罰の対象です。
ウ;児童買春の周旋やその勧誘、児童ポルノの頒布や販売などをすることなど
→児童ポルノ法5条から8条の罪において想定されている行為を対象としています。刑事罰の対象です。
エ;児童生徒等に対して、直接又は服の上から人の性的な部位その他の身体の一部に触れること(ただし、児童生徒等を著しく羞恥させ又は不安を覚えさせるようなものであること)
→迷惑行為防止条例において規制対象となっていることの多い行為を対象としています。刑事罰の対象です。
オ;児童生徒等に、直接又は服の上から人の性的な部位その他の身体の一部に触れさせること
→エと異なり、児童生徒等に、これらをさせることを対象としています。迷惑行為防止条例での規定対象とは異なります。
カ;通常衣服で隠されている人の下着又は身体を撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること(ただし、児童生徒等を著しく羞恥させ又は不安を覚えさせるようなものであること)
→迷惑行為防止条例において規制対象となっていることの多い行為を対象としています。刑事罰の対象です。
キ;児童生徒等に、通常衣服で隠されている人の下着又は身体を撮影させ、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向けさせ、若しくは設置させること
→カと異なり、児童生徒等に、これらをさせることを対象としています。迷惑行為防止条例での規定対象とは異なります。
ク;児童生徒等に対し、性的羞恥心を害する言動であって、児童生徒等の心身に有害な影響を与えるものをすること
②児童生徒性暴力等の防止や早期発見、対処の措置
次に、わいせつ教員対策法では、ケ;児童生徒性暴力等を防止するための措置や、コ;万が一、児童生徒性暴力等が行われてしまった場合の早期発見と対処のための措置について定めています。詳細は下記のとおりです。
記
ケ;児童生徒性暴力等を防止するための措置
児童生徒性暴力等を防止するための措置としては、教職員等に対する啓発、児童生徒等に対する啓発、児童生徒性暴力等により教員免許を失効した者のデータベースの整備等が定められています。
コ;万が一、児童生徒性暴力等が行われてしまった場合の早期発見と対処のための措置
児童生徒性暴力等が行われてしまった場合の早期発見と対処のための措置としては、学校等は早期発見のために児童生徒等及び教職員等に対する定期的な調査などを行うこと、国等は児童生徒性暴力等に関する通報や相談体制の整備等を行うこと、相談を受けた者は相談内容について犯罪の疑いがある場合には警察に通報すること、専門家による調査や児童生徒等に対する保護支援をすることなどが規定されました。
③特定免許状失効者等に対する再免許の特例
児童生徒性暴力等を行ったことにより免許状が失効するなどした者についてはその後の事情から再免許を授与するのが適当である場合に限り、再免許を授与することができることとなりました。
これは原則として再免許を授与しないことを意味し、再授与を行うためには児童生徒性暴力等を再び行う蓋然性が少しでも認められる場合は基本的に再授与を行わないことが適当とされています。
また、再授与に必要な再授与審査会では原則として出席委員の全会一致をもって議決することとなっています。
3【まとめ】
わいせつ教員対策法は、教職員等による児童生徒等に対するわいせつ行為が児童生徒等に対する「魂の殺人」とも呼ばれつつも抜本的解決方法が整備されていなかった中で成立、施行されたものです。
わいせつ教員が教壇に戻ってくるという事態は絶対にあってはならないという観点から、厳しい規制がなされるに至ったと言えます。