昨日、少年法適用年齢につき、20歳未満を維持し、代わりに検察官逆送の範囲を広げ、実際上の厳罰化を行う内容で与党合意がされました。
(逆送とは、大雑把にいうと、少年であっても成人と同等の刑事裁判手続きの対象になるという意味です)
私は、少年法適用年齢の引き下げや厳罰化には反対の立場です。
実名報道も(インターネット上の情報が半永久的に残存してしまい、完全に削除が困難な現代においては)、少年のみならず成人についても控えるべきだと考えています。
被害者の苦しみ、被害者家族の苦しみは、第三者が到底理解できるものではないでしょう。だからこそ、他人が勝手に被害者の気持ちを代弁して意見を述べることに違和感も覚えますが。
そう思うと、逆送の範囲を広げるのはやむを得ない部分があるように思えます。
しかし、そもそも今回の改正で被害者の保護(ここでいう「被害者の保護」は、処罰感情の充足という意味を念頭に置いています)は本当に図られるのでしょうか。
ここで、そもそも少年法の規定を確認してみます。
第二十条 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては、同項の決定をしなければならない。ただし、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。
20条1項が逆送の対象範囲を、20条2項がその中でも原則逆送とすべき範囲を示しています。
そして、今回の法改正は、「原則逆送」の対象を広げるものです。
しかし、現行法でも、必要的ではないものの、「死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件」について逆送可能なので、原則逆送とする範囲をあえて広げなくとも、一定の重大事犯については十分対応できる制度となっています。
なお、今回の法改正で原則逆送の対象となる主なものを確認すると、下記の通りになりました(今回対象となった犯罪につき☆をつけています)。
・現住建造物等放火☆
・非現住建造物放火☆
・建造物等以外放火☆
・現住建造物等侵害☆
・非現住建造物等侵害☆
・通貨偽造及び行使☆
・強制性交☆
・強制わいせつ等致死傷
・殺人
・傷害致死
・強盗☆
・強盗致死症
・強盗・強制性交等及び同致死
ちなみに、これ以外にもあまり聞いたことのない犯罪(騒乱、往来危険、税関職員によるあへん煙輸入等、etc…)も対象になります。
実際上、こういった犯罪で逮捕されるということ事態が珍しいでしょうが、大雑把な形で原則逆送の範囲を広げるという点についても疑問を感じます。
仮に逆送の範囲を広げるとしても、被害者の処罰感情を考えるのであれば、刑罰で一律にくくるのではなく、適した類型を限定できるはずです。
なお、少年法適用年齢引下げについての問題点は、日弁連の作ったパンフレットが詳しいです。参考までに。