たとえば未成年の児童が外出先で見知らぬ男性に声を掛けられて体を触られるなどの被害にあった場合、事後的に親はどのような対応をとるべきでしょうか。
まず、可能な限り詳細にその当時の出来事を児童から聴取し、記録に残すことが大切です。人の認知能力には限界がある上に、幼い児童であればなおさらです。
方法としては、親が児童にヒアリングを行い、メモと録音に残しましょう。場合によっては録音よりも録画の方が良いと思います。児童は言葉での説明能力に限界がありますし、「どこをどう触られた」などという類の説明は言葉よりも体の動きや部位を指し示すことで再現した方が分かりやすいと言えます。
次に、警察への被害相談に赴きましょう。親がヒアリングした際のメモや録音、録画の写しも渡せるようにコピーを用意しておきましょう。なお、警察への被害相談と親によるヒアリングの順序としては、とにかくまず親のヒアリングを先行すべきと考えます。というのも、
➀警察への相談までの間に時間が経過してしまい、記憶減退の可能性があること、
②警察への説明は児童としてのプレッシャーないし負担が大きく、まずは親がヒアリングをしておくことが負担軽減になること、
③警察への相談に赴いた際に結局は何があったかを親に聞かれるのでその質問に答えられるようにしておく必要があること
が理由です。
その上でですが、警察は被害相談を受け付ければ、被害現場を調査し、犯行現場を特定の上、周辺の店舗や民家に防犯カメラ映像が残っていないかの捜査を行います。それゆえ、個人レベルで防犯カメラの提供協力を店舗などに求める必要まではありません。
以上を尽くした上で、犯人が捕まったとして、犯行を否認した場合の扱いですが、児童の証言の他に防犯カメラや目撃情報も一切なかったらどうなるでしょうか。児童の証言のみで処罰は可能でしょうか。
この点、未成年者の供述能力ないし供述の信用性については、➀供述者の年齢、②経験した出来事が供述者の理解力、判断力などによって弁識しうるものか否か、③供述までの時間的間隔などの要素に基づき判断されます。
➀については当然、年齢が高いほど供述能力ないし供述の信用性が高まりますが、個別には供述者の発達特性などを考慮することもあります。
②については、児童にとって今起きていることが具体的に理解可能な事柄であれば供述能力ないし供述の信用性が高まると言えます。「体を触られた」ということについてはとりわけ十分に理解可能なことなのでこれが高まると言えます。
③については、出来事から近い時期での供述の方が供述の信用性は高まります。
以上から、その供述能力や供述の信用性が認められれば、児童の証言のみでも犯罪事実の認定は可能ですし、現に刑事裁判において児童の証言のみで犯罪認定が行われることはままあることです。