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いじめ重大事態に際しての調査のあり方に対する国の支援について

児童や生徒への重大ないじめが起きた際の教育委員会などの調査に課題があるとして、文部科学省は、来月から国が積極的に状況を把握し、助言や支援につなげる仕組みを新たに設けることになりました。

NHK NEWS WEB  2023年3月10日 19時30分 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230310/k10014004771000.html

学校でいじめがあると、学校はいじめの事実の有無の確認を行う、いじめがあるとされればこれをやめさせる、再発を防止するなどの措置をとる必要があります(いじめ防止対策推進法23条2項、3項)。

2 学校は、前項の規定による通報を受けたときその他当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、速やかに、当該児童等に係るいじめの事実の有無の確認を行うための措置を講ずるとともに、その結果を当該学校の設置者に報告するものとする。
3 学校は、前項の規定による事実の確認によりいじめがあったことが確認された場合には、いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、当該学校の複数の教職員によって、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行うものとする。

いじめ防止対策推進法23条2項、3項

そして、学校は当該いじめについて、「いじめ重大事態」に対しては当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うこととされています(いじめ防止対策推進法28条1項)。

第二十八条 学校の設置者又はその設置する学校は、次に掲げる場合には、その事態(以下「重大事態」という。)に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設け質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする。
一 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
二 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。

いじめ防止対策推進法28条1項

このように学校では、いじめ行為について、いじめの事実の有無の確認措置や調査の義務がありますが、とりわけいじめ重大事態に際しては、学校の関係者以外の第三者を含めた調査組織を構成することが大切です。

そのため、文部科学省が作成している「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」では、調査組織の構成について、以下のように記しています。

調査組織については、公平性・中立性が確保された組織が客観的な事実認定を行う
ことができるよう構成すること。
このため、弁護士、精神科医、学識経験者、心理・福祉の専門家等の専門的知識及び経験を有するものであって、当該いじめの事案の関係者と直接の人間関係又は特別の利害関係を有しない者(第三者)について、職能団体や大学、学会からの推薦等により参加を図るよう努めるものとする。

文部科学省 いじめの重大事態の調査に関するガイドライン

ところが、実際にはいじめ重大事態に対する調査に課題があるとして、冒頭の報道のように文部科学省による積極的な関与の取り組みが始まることとなったのです。

その具体的な課題として、報道では保護者との関係がこじれたり、委員になる人材が確保できずに調査が難航したりするなどがあげられています。

そこで、これらの課題の解消のために国による関与を行うとのことです。

これまでの当事務所におけるいじめ重大事態に対する学校や教育委員会の対応としては、以下の点が問題になることが多いと感じています。

①そもそも学校がいじめ重大事態との認識を持たないもしくはいじめを矮小化したり、自己保身に走る

②いじめられた側にも相応の原因があるような言動や態度をとる

③しぶしぶ調査に乗り出すも、学校関係者限りで調査体制を組もうとする

そのため、そもそも大前提として学校側が当該いじめが非常に深刻なものであるとの認識を持ってもらうことが一番大事だと思っています。今回の報道は、いじめ重大事態と認識してもらった上で、その後の調査体制のあり方についての問題です。当然、そのこと自体も大切ですが、そもそもいじめの重大さを学校側にもっとしっかりと認識してもらうことが大前提になると考えています。

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