国が「指導死」初の実態把握へ 岡山県の遺族の要望なども考慮
教員による不適切な指導によって、児童や生徒が自殺に追い込まれるいわゆる「指導死」について、文部科学省は、岡山県の遺族の要望なども考慮し、毎年行っている自殺に関する調査の選択肢の中に「教職員による体罰、不適切指導」を新たに設け、初めて実態の把握に乗り出すことになりました。
NHK NEWS WEB 2023年03月03日 18時13分
文部科学省では毎年、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」を実施し、その結果を公表しています。
その調査では、児童生徒による①暴力行為、②いじめ、③長期欠席(不登校等)、④中途退学等、⑤自殺、⑥教育相談の項目について全国の教育委員会を通じて行われます。
このHPでもこれまでもこの調査結果を念頭に、いじめや長期欠席、自殺のことなどについて都度、記事にしてきました。
今回はこの文部科学省の調査対象のうち、⑤自殺の調査における回答項目の変更について冒頭のような報道があったことを踏まえた解説をします。
まず、調査では児童生徒の自殺の状況として、小中校ごと、男女や学年ごとその人数を取りまとめています。その上で、「自殺した児童生徒が置かれていた状況」の調査結果を報告しています。
この「自殺した児童生徒が置かれていた状況」は複数の選択項目から当てはまるものすべてを選択することとなっています。そして、その選択項目はこれまで以下のとおりとなっていたのです。
- 家庭不和
- 父母等の叱責
- 学業等不振
- 進路問題
- 教職員との関係での悩み
- 友人関係での悩み(いじめを除く)
- いじめの問題
- 病弱等による悲観
- えん世
- 恋愛関係での悩み
- 精神障害
- 不明
- その他
学校は、これらの項目から学校で把握しているものを選択して回答をするのですが、これらの項目には学校や教員からの言動や指導を理由としたものが含まれておらず、これらを理由とした自死の場合には「不明」や「その他」に分類されてしまっていたと思われます。
そのため、自死遺族からはこれまでの調査項目は納得のできない選択項目となってしまっていたのです。
こうした調査項目の問題点について、自死遺族らが改善を求める活動を続け、この度の調査項目の改善に至ったとのことです。
その結果、教職員の不適切な指導によって児童や生徒が自殺に追い込まれる「指導死」についての実態解明が進みやすくなるといえます。
他方で、文部科学省の調査はあくまで学校が回答をしたものが取りまとめられることから、学校においてそもそも当該自死が「指導死」に該当すると考えるか否か、そのように回答をするか否かという問題はどうしても残ります。
この点については今後も自死の後に第三者による調査委員会の調査や遺族から学校に対する訴訟などを通じて実体解明を尽くすこととなり、その意味では指導死の抜本的な問題解決にはまだ時間がかかりそうです。