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中学いじめ調査結果の開示請求について

「真相は藪の中」という言葉がある。

関係する人物同士の認識の齟齬により、真実が明らかにならない状態を指す語である。

語源は芥川龍之介の小説「藪の中」である。この小説では、ある事件について、各登場人物らの目線から見た証言が語られるけれども、それぞれ微妙に言っていることが異なり、結局何が正しいか分からない…という結末になっている。

人の認識の曖昧さや、関係者が多数いるにもかかわらず、結局真実が詳らかにならないという不気味さを感じる作品である。

しかし、まだ「証言」が明らかになっているだけましだ。痛ましい事件が起きており、それを目にした人がいるかもしれないのに、その証言内容をそもそも知る手立てがないよりは。

今日、福島県で、いじめ調査結果の不開示決定につき、取消訴訟を提起した男性が勝訴したとのニュースが報道された。

いじめ調査結果、会津坂下町に開示命令 賠償訴訟判決:朝日新聞デジタル (asahi.com)

市は、個人情報への配慮を理由に不開示にしたという。たしかに、個人情報への配慮は不可欠だ。しかし、判決で示されている通り、個人名等個人情報にかかわる部分を伏せたうえで開示するなどの工夫は可能だったのではないか。

いじめを無くすことは困難だから、いつかいじめが無くなる日まで、いじめが起きてしまうという前提で、いじめの原因究明・再発防止を求めるための手段が確保されていなければいけない。そして、その道中で、当事者たる被害児童や、その親が置き去りにされることがあってはならない。この判例には、藪の中の真実をあぶりだすための、大きな意義があると思われる。