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学校はなぜいじめに対応しないのか?~いじめ問題に詳しい弁護士が原因と対応策について解説~

この記事では、いじめに何も対応をしない不誠実な学校について、その原因を明らかにした上で、どうすればよいかをいじめ問題の経験がある弁護士の立場で詳しく解説をしています。学校の対応にお困りの方はぜひ一読頂き、問題解決の参考にしていただければと思います。

1 学校はなぜいじめ問題に対応しないのか?

 学校で起きたいじめについて、被害者である子どもや、親ないし保護者がこれを学校や担任の先生に訴えても、速やかに必要な対応がとられず、被害者が泣き寝入りを強いられるケースが多く見られます。

 その結果、いじめはいつまでも止まず、被害が拡大し続けます。当然、被害者の生命や心身は傷つけられ続け、また、不登校になれば教育を受ける権利も侵害され続けたままとなってしまいます。

 最悪のケースでは、学校による誠実な対応がないために、いじめの被害者が自死・自殺に至るケースすらあるのです。

 このような最悪の結果をもたらすことすらある「いじめ」について、どうして学校は十分な対応をしようとしないのでしょうか?

 その原因にはいくつかあります。これまで弁護士として、法律の専門家として、数々のいじめ問題の相談を受け、事案に対応してきた立場からすると、大きく以下のとおり整理することができると考えています。

 ①学校の校長の対応に問題がある場合
 ②担任の対応に問題がある場合
 ③いじめ防止対策推進法の理解が不十分な場合

 以下、これら3つの原因について詳しく解説をし、その上でいじめに学校が十分対応をしない場合に、親や子供の立場で、どうすればよいかなどを説明したいと思います。

2 いじめに学校が対応しない原因について

⑴①学校の校長の対応に問題がある場合

 学校は、校長をトップとした組織のため、学校内で起きた出来事は基本的にすべて最終的には校長の判断が大きく尊重されます。これは小学校でも中学校でも同じです。

 また、教員は日ごろから校長の性格や言動を通じて、校長の考え方をよく理解しています。当然、いじめ問題についての校長の考え方も校長によりけりです。中にはいじめ問題に正面から向き合う優れた校長もいます。

 しかし、事なかれ主義でいじめ問題を矮小化したり、無かったことにしたりしようとする校長も実は少なくありません。さらには、いじめがあると認めつつも、「程度問題」として取り扱ったり、「お互いに原因がある」として被害者の落ち度を指摘したり、「話し合えば分かる」「謝れば済むこと」として受けた被害を理解しなかったりすることも少なくありません。

 運悪くこのような校長のいる学校内でいじめ被害に遭うと、担任を通じて被害深刻をしても、その後の学校の対応は推して知るべしと言わざるを得ません。

 具体的には、加害児童に(口先だけの)謝罪をさせて終わらせたり、事実調査を十分にしなかったりします。結果、その後もいじめは止まず、むしろ学校の対応の生ぬるさを知った加害児童は、以前にも増して悪質ないじめを続けるのです。

 校長がこのような対応だと、担任がそうでなかったとしても結論は同じです。組織の中で担任だけが校長に歯向かって、いじめの酷さを訴えて事実調査を一人で進めるなどということなど、当然あり得ません。担任は結局、組織の中の長である校長のいじめに対する対応を追従するだけなのが通常です。

 したがって、第一に、校長の対応に問題があると、学校として、生じたいじめに十分な対応がされることはありません。

 逆に、校長がいじめ問題に理解が深いようなケースであれば、(そもそもいじめも生じにくいし)いじめが生じたとしてもスムーズに解決することが多いと思います。

 当事務所で取り扱ってきたいじめ問題でも、やはり校長の無理解を前提とした対応が被害を拡大させたり、保護者の感情を悪化させたりするケースが少なくありません。

 その意味では、いじめ被害に遭った際には、まず校長がどのような人物で、いじめ問題にどのように対応をするかを見極めておくことがとても大切だと考えます。しっかりした校長であれば、生じたいじめ問題も学校の力ですみやかに解決が可能ですし、そうでない校長の場合には、いつまでも学校任せではきちんとした解決は期待できません。すぐに弁護士を含めた相談先への相談をお勧めします。

⑵②担任の対応に問題がある場合

 次に、担任の対応に問題がある場合も、学校がいじめに十分対応しないこととなる原因の一つです。すなわち、担任の先生はいじめの現場に同席することが圧倒的に多い立場であり、被害者からすれば、(場合によっては)いじめを現認している唯一の大人であり、いじめの第三者であるため、自分を助けてくれるものと信じています。

 ところが、担任は時に、そもそも発生したいじめに気が付いていなかったり(LINEやX(旧Twitter)などのSNSを用いたいじめの場合を含む)、気が付いていたとしても(上記の校長のケースと同様に)お互いの生徒に原因があるとしてしまったり(例えば、加害者も暴力を振るっていたが、被害者も叩き返していたのであり、お互いが悪いと決めつけるなど)、加害者にもうやめると言わせ、謝らせればそれで良いと思ってしまったりします。

 もっとひどいケースでは、被害児童の訴えはいじめでも何でもなく、単に授業や学校をさぼりたいための口実かのように捉える担任もいます。そうなると、被害者からすれば身近で頼れる存在である担任という大人を失うこととなり、途方に暮れてしまうのです。それどころか、いじめ被害を訴えたことを契機に、担任から二次被害を受けることにすらなるのです。

 当事務所で受けてきたいじめ被害の相談でも、やはり担任の対応に大きな問題があり、被害が継続したり、重大化したりということがよくあります。弁護士の立場からすれば、担任の教師には、生徒からの相談の窓口として機能して欲しく思いますが、そうなっていないケースが多々あるのが現状です。

 したがって、いじめ被害に遭ってしまった際には、校長の場合と同様に、担任がいじめ問題をどう捉えているのかをしっかりと見極めることがとても大切です。

⑶③いじめ防止対策推進法の理解が不十分な場合

 これまで悲惨ないじめが後を絶たず、被害が蔓延し続けてきたことから、2013年にいじめ防止対策推進法が施行されました。

 この法律では、①いじめの定義を被害者基準で判断するように明確化し②これを防止するための学校を含めた対策の必要性を明確化しました。

 そのため、学校側も、担任でも当然、この法律の規定に基づき「いじめ」の該当性を判断しなければなりません。そして、この法律ではいじめの判断基準として、いじめ行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいじめとしているのです。

 ところが、このような法律の内容を十分に理解せず、いまだに旧来型の物の考え方で「いじめ」を判断しようとする校長や教員、担任が少なくないのです。

 当事務所では、いじめ問題のご依頼があると、学校に訪問し、校長や主任、担任と面談をすることが多々ありますが、やはりいじめ防止対策推進法の趣旨を正しく理解せずにいると感じるケースが少なくありません。

 そのようなケースでは、弁護士の立場から法律の趣旨を一から説明し、ガイドラインに沿った解釈をするように説得をすることとなります。

 したがって、いじめ被害に遭ってしまった場合には、学校側がいじめ防止対策推進法の趣旨や基準に従って、いじめ該当性を判断しようとしているかを十分に見極めるようにしてください。

 なお、いじめ防止対策推進法の内容については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

3 いじめに学校が十分対応をしない場合はどうすればよいか?

⑴いじめに学校が十分対応をしない場合に取り得る手段は?

 では、以上のような原因に基づき、発生したいじめに学校が十分に対応をしない場合には、どのような手段を取ることができるのでしょうか?

 この点、このコラムでは、①教育委員会に持ち込む方法②警察に被害相談をする方法③弁護士に相談をする方法を解説いたします。

⑵①教育委員会に持ち込む方法

 まず、教育委員会に相談を持ち掛けることが考えられます。学校は、体面を気にして校内で生じたいじめを表にしようとせずに終わらせようとすることが多々あります。当然、その場合には教育委員会に相談や報告をすることもありません。

 そのような学校の対応に対して、教育委員会に被害者の立場で直接持ち掛けることで、教育委員会に事の重大さを認識してもらい、学校を指導してもらう余地があります。

 なお、教育委員会は、公立学校に対する指導・監督する機関としての位置づけのため、私立学校に対しては何らの権限も持ちません。そのため、私立学校の場合には、教育委員会ではなく、当該学校法人の所在する各都道府県に対して相談を持ち掛けてください。その結果、都道府県の立場にて当該私立学校に対して、生じたいじめ問題についてのあるべき対処方法を提示してくれることがあります。

⑶②警察に被害相談をする方法

 生じたいじめ被害が暴行、傷害、恐喝、強迫、名誉毀損、侮辱などといった刑法上の犯罪行為に該当する場合には、直接警察に被害相談を持ち掛けることも可能です。

 当然、「未成年者同士の問題だから」とか「学校で起きた出来事だから」といってすぐさま十分には対応をしてくれないこともあると思います。

 しかし、そもそもいじめ防止対策推進法では23条6項において、以下のように規定しています。

「学校は、いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるときは所轄警察署と連携してこれに対処するものとし、当該学校に在籍する児童等の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは直ちに所轄警察署に通報し、適切に、援助を求めなければならない。」

 さらに、文部科学省では2023年2月7日に、「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について」と題する通知を各都道府県の教育委員会等に発出しています。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_ijime_boushi_kaigi/dai2/siryou1.pdf

 そうすると、学校で起きたいじめであっても、犯罪行為に該当する場合には、警察機関としての対処が必要なことは明らかです。そのため、上記のような警察の言い訳は到底通用しません。

 当然、被害者が直接警察に被害相談をすることも許されてしかるべきです。したがって、いじめ被害に遭った結果、上記のような犯罪行為を受けたという場合には、直接警察にその相談をすることも考えてみてください。

⑷③弁護士に相談をする方法

 以上の各相談先は、いずれも公的機関に対するものです。これらとは異なり、民間の立場として弁護士への相談をする方法もあることを知っておいてください。

 特に、以上の各相談先は、公的機関という立場上の限界から、被害者の被害申告に対してどこまでの行動をとってくれるのかがはっきりしないこと、あくまで第三者としての行動に留まることに注意が必要です。

 他方で、弁護士は被害者の立場に立って、法律の知識や経験を用いて最大限の結果を目指した行動をとることとなります。

 実際、当事務所にご相談に来られた方々から、「あちこちに相談に行ったが思うように動いてくれず、最後にここにたどり着いた」と言われることがあります。やはり、学校内の出来事である以上、学校の校長や担任の力で解決をしたいと思うのが通常でしょうし、仮に学校外の力を借りるにしても、すぐに弁護士にという考える方もまだまだ少ないようです。

 そうした中、あらゆる手段を尽くしたものの、止む無く最後に弁護士に辿り着くということのようです。

4 いじめに学校が対応しない場合に弁護士に相談するメリットは?

⑴弁護士の立場と役割

 弁護士は法律の専門家であること、被害者の代理人という立場にあることから、自身の知識や経験を最大限に駆使していじめ問題の解決に向けた行動をとることが可能です。

 また、ヒアリングの専門家でもあることから、いじめの被害を受けた児童生徒や保護者の方々の心情に十分に配慮をした上での事情聴取も可能です。

⑵いじめ被害の重大さを学校や被害者へ理解させること

 その結果、まずは受けた被害、生じた出来事を事実としてしっかりと把握し、学校や加害者に伝えることができます。

 続いて、これら被害等を踏まえた被害者の心情も、学校や加害者に伝えることができます。弁護士としていじめ問題に対応をしてきた経験に照らすと、「そもそも当該いじめの重大性や、受けた被害の重大さが学校や加害者、その保護者に十分に伝わっていない」と強く感じています。その理由や原因は様々ですが、少なくとも弁護士がその橋渡しをすることができるのは事実です。

⑶いじめ調査(いじめ重大事態の調査を含む)の実施申し入れ

 続いて、学校に対してはいじめ防止対策推進法に基づく事実調査、いじめ重大事態としての調査の申し入れが可能です。

 これは、生じたいじめの実態を学校や専門家も含めてしっかりと検証をしてもらうために必要なものですが、いじめ防止対策推進法の趣旨を正しく理解していなかったり、いじめを矮小化して解決しようとしたりしていると、蔑ろにされがちな問題です。

 しかし、いじめ問題に詳しい弁護士の立場から、これら調査が如何に重要なのかを法律上の根拠や文部科学省のガイドラインを駆使して学校に伝えることができるのです。

⑷加害者に対する責任追及

 さらには、弁護士として、被害者の受けた被害を正しく金銭に評価し、加害者やその法定代理人親権者に求めることもできます。

 その場合に、具体的に何をいくら求めることができるのかは別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

 被害者やその保護者としては、これら金銭賠償とは別に、たとえば謝罪、たとえば加害児童の退学などを求めたいと考えることも多々あります。謝罪については名誉毀損が成立するような場合は別として、法的に加害者に求めることができるものではありませんし、退学もまた同様です。

 とはいえ、生じたいじめにより、被害者自身は学校にも行けないなどの重大な事態に至っているケースでは、まずはその状況をしっかりと加害者にも理解してもらうこと、被害者や保護者の心情としては謝罪や退学を求めたいと考えていることを伝えることは可能です。

 当然、話し合いの結果として、加害者からの謝罪を受けることになったり、自主退学をしてもらうことになったりすることもあり得る話です。したがって、弁護士としては、このような可能性も含めて加害者との交渉を持つように心がけています。

5 いじめ問題に対応しない学校に関しての弁護士への相談料や弁護士費用は?

 いじめは人生被害そのものです。そのため、一刻も早くいじめを止めること、一刻も早く被害を回復することが何よりも大切です。

 そのために弁護士へのご相談を頂く際には、当事務所ではご相談料5,500円(税込・30分あたり)にてお受けしています。

 最近では、お住まいの地域ではいじめ問題に詳しい弁護士がいないなどの理由から、インターネットを通じて県外よりご相談申し込みをお受けするケースが増えています。

 その場合には、ご来所頂くことでも当然構いませんし、ZOOMでのオンライン相談でも構いません。被害の概要などの資料をメールなどで事前に送信等して頂ければ、オンラインでもより一層スムーズにご相談が可能となります。

 また、ご相談の上で学校との対応についてご依頼を頂く場合には、現在、着手金22万円にていじめ実態調査の申し入れの対応を受け付けています。

 他にも、加害児童や保護者に対する損害賠償の事案では、示談交渉の着手金22万円にてお受けしております(報酬は受けた金額の16.5%)。

 いじめ被害を受けた上に弁護士費用も必要になることは大変なご負担かと思いますが、被害児童の一刻も早い被害回復を最優先に行動して頂くことをお勧めしています。
 
なお、こちらは弁護士費用の詳細ページです。ご参照ください。

執筆者;弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)

1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所