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先生からわいせつ行為を受けた場合、いつまで責任追及できるか。何が証拠になるか。

1 わいせつ被害と法的責任

「学校の先生から体を触られたり、キスをされたりといったわいせつ行為をされた。とてもではないが、周りに打ち明けることも相談することもできない。いつかきちんとその責任をとって欲しいと考えているが、いつまでならその請求が可能か知りたい。また、証拠としてはどのようなものが必要かも教えて欲しい。」

このような被害や相談が後を絶ちません。学校内外にて先生が生徒に対してわいせつ行為を働く事案が多く見受けられます。これが同意なきわいせつ行為等であれば当然に刑事上、民事上の責任が生じます。

 以下、わいせつ行為の刑事責任、民事責任等についてご説明いたします。

2 わいせつ行為と刑事責任

⑴刑法

まず、刑事上は、強制わいせつ罪(刑法176条)の適用が問題となります。強制わいせつ罪は、相手方が13歳以上の場合には暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした場合に、相手方が13歳未満の場合には、暴行又は脅迫を用いるかどうかを問わず、単にわいせつな行為をした場合に成立します。

強制わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下の懲役となっています。

⑵条例

また、各地方自治体には、青少年健全育成条例を制定しており、青少年に対する淫行又はわいせつ行為を刑事罰をもって規制をしています。

たとえば岡山県青少年育成条例では、「何人も、青少年に対し淫行又はわいせつ行為をしてはならない。」と定めています(岡山県青少年健全育成条例20条1項)。

そして、「青少年」とは「満18歳に満たない者」とされています(岡山県青少年健全育成条例2条1号)。

その上で「淫行」とは「青少年を誘惑し,威迫し,欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為」を指します(最判昭60・10・23)。

このように青少年育成条例に定めるところの「淫行」はただ単に性交又は性交類似行為をしただけの場合には該当しないのです。言い換えると、青少年育成条例にある「淫行」に該当するためには、その手段性や、対象性が問題となり、青少年との間での純粋な恋愛関係に基づくような性交は青少年育成条例に違反しないこととなります。

こうして青少年育成条例に違反した場合には、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金とされています(岡山県青少年育成条例35条1項)。

参考に岡山県青少年育成条例の参照先を張り付けておきます。

https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/722065_6549818_misc.pdf

3 わいせつ行為と民事責任

次に民事上は、かかるわいせつ行為に対する損害賠償を請求できます。わいせつ行為のために受けた損害として、治療費、慰謝料などが挙げられます。

4 わいせつ行為に対する責任追及の時効

問題はこれらの責任を追及可能な期間です。刑事上の責任に対しては公訴時効、民事上の責任に対しては消滅時効ないし除斥期間と呼ばれる期間制限があります。

そして、刑事上の公訴時効は強制わいせつの場合には7年です(刑事訴訟法250条2項4号)。また、青少年育成条例違反の場合には3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。

さらに、民事上の不法行為の消滅時効は3年であり、除斥期間は20年です(民法724条)。

従ってこれらの期間が経過する前に責任追及のための法的手段に打って出ることが必要です。

5 わいせつ行為の責任追及と必要な証拠

そして、責任追及のためには教師からされたわいせつ行為の証拠を如何にして残すかが重要です。当然、第三者による目撃が期待できないので、目撃証言は難しいと思います。それでも、その時にされた被害の内容をできるだけ具体的にメモや日記に残しておくとよいです。他にもわいせつ行為を受けた際にこっそりと録音を残すなども有効です。

できれば被害を受けたらすぐにでも家族やカウンセラー、友人などに相談をできると良いのですが、そのような行動に出ることができない場合でも、将来のためにきちんとした証拠を残しておくことをお勧めします。

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