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いじめは「犯罪」か。いじめの定義とこれが犯罪に該当する場合について。

1 いじめとは何かについて

世間で広く使われる「いじめ」という言葉ですが、法律上は以下のように説明、定義することができます。

「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」(いじめ防止対策推進法2条1項)

この定義からも明らかなように、いじめというのは、加害者からの行為を前提に、当該対象となった児童などが「心身の苦痛」を感じるかどうかという点に重点があります。

当然、加害者の行為については、定義にもあるように「物理的なもの」(叩くとか物を壊すとか)に限らず「心理的なもの」(仲間外れにするなど)も含むという点が重要です。

このように、いじめの定義では加害行為が特定の行為に限定がされていないことや、また昨今のインターネットやSNSの普及などもあるので非常に多くの行為がいじめに該当し得ることとなります。

2 いじめが犯罪行為に該当し得る場合について

以上のようにいじめ行為というものは非常に範囲や対象が広くなっています。そのため、いじめ行為が犯罪行為に該当することがあるのも実際です。

典型的には叩く蹴るなどは暴行罪、暴行の結果ケガをすれば傷害罪、脅してお金をとるなどは恐喝罪、物を勝手にとるのは窃盗罪、物を壊すのは器物損壊罪、裸の写真を撮影してSNSにアップすると脅せば脅迫罪、ネットでの誹謗中傷は名誉棄損や侮辱罪、死ねとそそのかすのは自殺関与罪などといった具合です。

これらは刑法犯なので、14歳未満の加害者による場合には刑事責任能力がないとされますが(刑法41条)、家裁の審判の対象とはなります(少年法3条1項2号)。また、14歳以上で18歳までの間にこれらを犯した場合も同様です(少年法3条1項1号)。

3 いじめが犯罪に該当し得る場合と学校の対応について

以上のとおり、いじめ行為は一定の場合には犯罪行為に該当するところ、2023年2月7日付で文部科学省から各都道府県教育委員会などに「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について」と題する通知が発せられました。

https://www.mext.go.jp/content/20230207-mxt_jidou02-00001302904-001.pdf

犯罪行為(触法行為を含む。)として取り扱われるべきいじめなど学校
だけでは対応しきれない場合もあります。これまで、ややもすれば、こうした事
案も生徒指導の範囲内と捉えて学校で対応し、警察に相談・通報することをため
らっているとの指摘もされてきました。しかし、児童生徒の命や安全を守ること
を最優先に、こうした考え方を改め、犯罪行為として取り扱われるべきいじめな
どは、直ちに警察に相談・通報を行い、適切な援助を求めなければなりません。

この通知では上記のとおり、学校が警察への相談や通報をためらうことの弊害を指摘し、警察への相談、通報と適切な援助を重要視しています。

これはある意味で当然のことなのですが、得てして学校再度はいじめという校内で起きた問題を矮小化したり、内々で処理をしようとしたりする傾向があるところ、文部科学省においてはそのような対応によりたとえば自殺に至るという最悪のケースを避けるためにも警察との連携を重視すべきと警鐘を鳴らすものと言えます。